ルナの魔法がダメならば……他の人の魔法でもいい。とにかく魔法が見たい! レイニーの魔法への渇望は、ますます高まっていた。
「ルナの魔法じゃなくてもいいんだけど……魔法の練習場ってないのかな?」
レイニーは、何とかして魔法を見る方法を探した。
「……あるじゃないですか。兵士の訓練場が……」
ルナは、少し呆れたように呟いた。
へぇ~。兵士の訓練場があるのか!? レイニーの目に、新たな希望の光が宿った。
「あぁ……そうだった。そこに行こうよっ。ね♪」
レイニーは、とびきり可愛い笑顔を作り、ルナに懇願した。ルナは、頬を膨らませて、少しばかり不満げな表情をしながらも、立ち上がってくれた。
「むぅ……そこも禁止されていますよ……危ないので立ち入り禁止ですっ……」
ルナは、小さく唸るように、重ねて注意を促した。
「立ち入らなければ良いんでしょ? にしっし……♪」
レイニーは、悪戯っぽい笑顔を浮かべ、ルナの言葉をうまくすり抜けた。
「見るだけですよ……お兄様ぁ〜」
ルナは、ため息をつきながら、レイニーに念押しをした。その声には、諦めと、兄への心配が混じっている。妹に注意される兄って……俺って、そんなキャラなのね。レイニーは、自分の新たな立場に、どこか複雑な感情を覚えた。
妹と並んで仲良く歩いていると、すれ違うメイドさんたちが道を避けて、優しい笑顔で挨拶をしてくれる。偉くなった気分だね♪ レイニーは、その状況に浮かれ気分になり、自分もサービス精神旺盛に微笑み返し、可愛く手を振ってあげた。
「きゃぁ。レイニー様ぁ……♡」
「わ、私に手を振ってくださったのよ!」
「私によ。さっきも微笑み返して下さいましたし」
メイドさんたちの興奮した囁き声が、周囲に響き渡る。ムスッとしたルナが、そんなレイニーをジト目で見つめてくる。え? 俺は喜んでくれるから、ただサービスして笑顔を返して手を振ってるだけだよ? レイニーは、ルナの反応に首を傾げた。
「お兄様ぁ。恥ずかしいのでやめて下さい……」
ルナは、小さな声で、恥ずかしそうにレイニーの袖を引っ張った。
「え? 喜んでくれてるよ?」
「そんな事をしていると、お母さまに叱られますよ」
ルナの言葉に、レイニーはビクリと体を震わせた。
「はぁい」
レイニーは、素直に返事をした。
どうやら俺たちは上層階にいたらしく、長い階段を数階下に降りて、ようやく兵士の訓練場に辿り着いた。中からは、剣がぶつかり合う音や、魔法が炸裂する音が響いてくる。……見えないじゃん!! レイニーは、目の前の扉に遮られ、焦れた。我慢ができずに扉を勢いよく開けて中に入ると、中にいた兵士たちの視線が一斉にレイニーに集中された。そして……責任者っぽい、いかめしい顔をした男が、険しい表情で近寄ってきて注意をされた。
「レイニー様、危ないので入室は禁止されています」
男の声には、厳しさと、レイニーの安全を案じる気持ちが混じっていた。もぉ〜。目の前で魔法を放っている音が聞こえるのに……見えないっ!! レイニーは、魔法を見たい衝動に抗えなかった。
「ねぇ〜。ちょっと見るだけ! ねっ♪」
レイニーは、渾身の可愛い笑顔を作り、男に懇願した。
「ダメです。私が怒られてしまいます。困らせないで下さい」
男は、眉一つ動かさず、レイニーの可愛らしい笑顔にも屈することなく、きっぱりと断った。注意をされて……扉を開けられて追い出された。むぅ……俺、エライんだよね? それに、俺の笑顔が効かなかったぞっ。むぅ……。レイニーは、不満そうに口を尖らせた。
「だから、ダメですよって言ったのにぃ……」
ルナが、呆れた顔をして、扉の外でレイニーを待っていてくれた。その表情には、「だから言ったじゃない」という諦めが滲んでいる。
「ねぇねぇ、魔法が見たい〜」
レイニーは、駄々っ子のように妹に懇願した。ルナは、お願いをされて嬉しそうな表情をするが、解決策はなさそうで、ただ困ったように顔を曇らせるだけだった。
そんな時に、背後から、凛とした声が掛けられた。
「こんな所で、なにをしているんですか? レイニー様、ルナ様」
なんだかとっても……怖そうで、偉そうな人が声を掛けてきたぞ……怒られるパターンかなぁ……。レイニーの背筋に、冷たいものが走った。ルナ、ゴメンよぉ。レイニーは、心の中でルナに謝った。ルナは、その声に怯えたように俯き、瞳にはうるうると涙が浮かんでいた。
「あ、あの……魔法が見たくて……俺が、ルナを誘ったんで……」
レイニーは、慌てて釈明しようとすると、ルナがレイニーの服を掴み、その背中に隠れた。うん。うん。それで良いよ。実際、俺が誘ったんだし……。レイニーは、ルナの行動に安堵した。
「……そうですか、魔法を見たくてですか……」
偉そうな人は、レイニーの言葉に意味ありげにニヤッと笑った。その表情には、何か企みがあるかのような色が見て取れる。そして、「では、王族専用の訓練場に行きますか」と言ってきた。
ルナが、え? っという顔でお偉いさんを見つめていた。その表情には、驚きと、信じられないという感情が混じっている。偉い人が先頭を歩き、二人を案内してくれるらしい。
「それより……あそこのお嬢様……レイニー様の彼女さんですか? にひひ……可愛いじゃないですか。うぉ……頬を赤くして、こちらを見てますよ!」 別の兵士がからかうように言う。まさか……あのムスッとしたフィーが? レイニーは疑い半分でちらっと見学席の方を見たが、フィーはすぐにそっぽを向いてしまった。「うっ……騙された……」レイニーは思わず口元を緩ませた。「からかわないでくださいよ〜」 レイニーは苦笑しながら訓練を少し続け、休憩時間になり練習場を出ようとした時、ちょうどフィーとすれ違った。「あら……王子様が兵士と練習ですか?」 フィーの声には、微かな驚きが込められているように聞こえた。普通、王族は剣術の師匠に教わるものだと聞く。レイニーは第三王子であり、剣の才能がないと判断されていたらしく、師匠は付けられていなかった。頼めば付けてもらえるとは思うけれど。「うん。楽しいよ〜」 レイニーは屈託のない笑顔で答えた。「そうなのですか。兵士とも仲良さそうにしているのですね」 フィーはどこか落ち着かない様子で、もじもじしながら話す。普段のムスッとした表情はどこへやら、やや無表情ではあるものの、戸惑っているような雰囲気が伝わってくる。「うん。仲良くしてるね。気を使わせちゃってるけど……最近じゃ、普通に話しかけてきてくれるし♪」 レイニーがそう言うと、フィーは急に無言になってしまった。このまま巻き込まれるのは勘弁してほしい。「……じゃ……またね♪」 レイニーは可愛らしく手を振り、その場を立ち去ろうとした、その時だ。スッと、不意に服の裾を掴まれた。「え……? 捕まった……」 予期せぬ状況に、レイニーは内心で動揺した。「な、なにこれ……ねぇ……俺の護衛は?働いてよ……」そう言いたげな表情で護衛を見つめるが、彼らは目を逸らした。職務放棄か!?「…………」 フィーが俯き、ほとんど聞こえないような小声で何かを言っている。レイニーは顔を近づけ、聞き返した。「ん? な、なに?」「あの……一緒に……いて」 その言葉に、レイニーは内心で叫んだ。「……なんで? 正直、嫌だっ! 絶対に……イヤだ! 気まずいし……無言だし、ムスッとするし」「えっと……なんで?」 思わず、ド直球な質問が口から飛び出した。「なんでって……わたしの誘いを断る気なの?」 フィーの視線が、
ガードナーはその光景を見て、心の中で驚きと緊張が入り混じる感情を抱いた。『まさか、ここまでの威力を持つとは…。レイニー様はただ者ではない。これほどの魔力を制御しきれる者など見たことがない』 彼の心は、驚きと共にレイニーへの信頼と期待が一層強まっていった。『この若さでこれほどの力を持ち、それを自在に操ることができるとは…。レイニー様がどこまで成長するのか、私も楽しみだ。すでに、この私をはるかに超える技術、魔力量に威力だな』 ガードナーは深く息を吸い込み、再び平常心を取り戻すとレイニーに向き直った。「素晴らしい、レイニー様。この調子で技術を磨き、さらなる高みを目指してください。あなたの才能は無限だが、練習場所に気をつけてください。何度も言いますが、他の者に見つかっては騒ぎになりますので……」 ガードナーの表情には、心からの尊敬と期待が込められていた。その眼差しは、未来に向けての希望と信頼を象徴していた。♢兵士との訓練 その日は朝から、屋外の練習場で兵士たちに混ざって魔法の訓練に励んでいた。魔法の射撃訓練は一人でもできるため、訓練場の片隅で実践的な訓練を積んでいた。相手は上級兵士で、剣の腕も一流、さらに魔法も使いこなすという強者だ。彼は主に剣技を繰り出し、補助的に魔法を放ってくる、厄介な相手だった。 最近では、その強者が率いる小隊のメンバーも訓練に参加してくれるようになっていた。「小隊長、一人だけ訓練してるなんてずるいですよ! しかも……レイニー様となんて! 出世する気が満々ってバレバレですよー!」 そんな賑やかな声が飛んでくる。レイニーは内心で苦笑した。「いや、俺に気に入られても出世はできないだろ……第三王子だし、軍の構成に口出しできるわけないじゃん」とは思うものの、彼らがからかい半分で言っているのは理解できた。「お前ら参加するなら、ふざけてないで真面目にやれよ! ケガするぞ! ケガをしたら収入が絶たれて嫁や彼女に捨てられるぞ〜」 小隊長の厳しい声が響き渡ると、たちまち全員の顔つきが真剣になる。さすが小隊長、言葉の選び方を知っている。この世界では、前世のような「労災保険」などなく、一度ケガで使い物にならなくなれば解雇が当たり前だ。英雄級の人物なら話は別だろうが、一般の兵士にとっては死活問題なのだ。♢突然のチーム戦提案「チーム戦をしません
次に案内されたのは自然エリアだった。高くそびえる木々や、流れる小川が広がり、訓練兵たちは自然のエネルギーを取り入れた魔法の訓練を行っていた。「こちらは自然エリアです。ここでは、自然の力を取り入れた魔法の訓練を行います。自然と一体化する感覚を養うことで、魔法の力を引き出します」 ガードナーが説明した。レイニーはその美しい光景に感動し、「ここは本当に別世界みたい……♪」と微笑んだ。 ガードナーはさらに、実戦シミュレーションエリアにレイニーを案内した。ここでは、兵士たちが実際の戦闘を想定したシミュレーション訓練を行っていた。「これは実戦シミュレーションエリアです。ここで兵士たちは、仮想の敵や状況に対応するための訓練を行います。チームワークや戦術の重要性が強調されます」 ガードナーが説明した。レイニーはその迫力に驚きながら、「実際の戦闘に備えるための訓練なんだぁ~。迫力が違うね!」と納得した。 最後に、ガードナーは特殊魔法訓練エリアにレイニーを案内した。ここでは、訓練兵たちが高度な魔法技術を習得するための訓練を行っていた。「こちらは特殊魔法訓練エリアです。多重魔法や防御魔法など、特定の魔法技術を磨くための場所ですが、多重魔法を扱える者はおりませんが……」 ガードナーが説明した。レイニーはその神秘的な光景に目を奪われ、「ここで皆が、どんどん強くなっていくんだね~」と感心した。 一通りの案内を終え、ガードナーは観客席に戻るとすぐに人払いを命じた。「観覧席の周りの警護を頼む。このエリアに人を近づけるな」 警護兵に命じると、観覧席のある室内にはレイニーとガードナーだけが残った。真面目な表情のガードナーに見つめられ、レイニーは緊張が高まった。先ほどとは違い、ガードナーの笑顔は消えていた。「いかがでしたでしょうか?」 実際に間近で見ると、すごい迫力で、訓練の厳しさや過酷さ、そして兵士たちの努力の結晶がその強さに現れていることが理解できた。「過酷な訓練を乗り越えて、今の強さがあると理解できましたっ」「強さですか。お気づきになられましたか?」「え? もちろんです。過酷な訓練に耐え、実戦を想定した訓練や特殊訓練はすごい迫力でしたっ♪」「そのすごい技術の頂点ともいえる多重魔法をレイニー様はあっさりとお使いになられたのですよ。王国軍の魔術師の精鋭部隊でも扱え
メインフィールドの一角には、射撃練習エリアが設けられている。ここでは、魔法の矢やエネルギーボルトが次々と標的に向かって放たれ、その精度と威力を競っていた。標的は動き回るマネキンや遠くに設置された的で構成されており、訓練者たちはそれぞれの的に向けて魔法を放ち、集中力と技術を試している。透明な防護壁が訓練者の背後に立てられ、指導者が安全に観察し指導できるように工夫されている。 さらに奥には、近接戦闘訓練エリアが広がっている。ここでは、剣術や格闘技の訓練が行われており、木製のダミーや人型のマネキンが整然と並んでいる。訓練者たちは、実戦さながらの模擬戦を行い、自らの技術を磨いている。地面は柔らかな砂で覆われ、転倒した際の怪我を防ぐ工夫が凝らされている。 練習場の一角には、自然エリアも存在する。ここでは、高い木々が生い茂り、小川が流れる中で、自然の力を取り入れた魔法の訓練が行われている。鳥のさえずりや風に揺れる木々の音が心地よく響き、訓練者たちは自然と一体化する感覚を養いながら、魔法の力を引き出す方法を学んでいた。 観覧エリアも設けられており、訓練を見学するための座席やベンチが整然と並んでいる。ここでは、指導者や他の訓練者が訓練の様子を見守り、時折指導やアドバイスを行うことができる。観覧エリアには魔法の防護結界が施されており、観覧者の安全も確保されている。 練習場全体には、訓練生たちの掛け声や魔法の発動音が響き渡り、活気に満ちた雰囲気が漂っている。周囲の自然環境と調和し、魔法の力を最大限に引き出すための理想的な環境が整えられていると感じた。「わぁ〜すごいっ! ガードナーさん、近くで見るのは可能ですか? いつも、危ないって追い出されちゃうので〜」 レイニーは、頬を膨らませていじけたように言った。その声には、少しばかり不満が滲んでいる。「あはは……それは、そうでしょう。レイニー様にケガ負わせたら一大事ですからな」 ガードナーは、苦笑いしながら答えた。「やっぱりダメかぁ……ちょっと期待したんだけどなぁ……まあ、普段はここのエリアに入るのは禁止されてるし。こんな近くで訓練を見られたんだし満足かも。えへへっ♪」 レイニーは、そう言って小さく笑った。しかし、その内心では、ガードナーは「レイニー様が興味を持たれたぞ! よし。案内をしてもっと魔法に興味を持って頂き……
あの伝説の魔術師アストラル・ファルコナーの多重魔法を簡単に操っていたのだぞ? そして魔法でミスリル製の盾を貫通させ、山を吹き飛ばすほどの偉大な魔術師アストラル・ファルコナーを超えるかもしれん。団長は、レイニーの秘めたる可能性に、興奮を隠しきれないでいた。「あの……これから訓練に参加してみませんか?」 レイニーの応対がフレンドリーだったので、団長はレイニーに興味を持ち、その能力をさらに引き出してあげたいと思い、誘っていた。彼は、すっかりレイニーが王子だということを忘れていた。「え? わっ、無理だよっ。俺、体力ないしぃ……軍の訓練についていけるわけないよぅ〜」 レイニーは誘われてすごく嬉しかったが、可愛く体力がないアピールをした。なぜなら、軍の訓練のイメージが過酷で厳しく、体力づくりがメインだと思っていて、現に目の前で兵士たちが練習場を走らされていたからだ。 体力づくりや厳しい訓練は避けたいが、魔法の訓練には興味があった。そう、「未知なる魔法の探求がしたい」「でも、面倒で疲れる体力づくりはしたくない」とレイニーは考えていた。 団長はそれを聞いて、「軍人なのに何を言ってるんだ?」と思ったが……すぐに思い出した。「このお方は、この王国の王子様だった」ということを。(そうだ、王子様を軍の訓練に誘って、参加させるのはまずい……誘うこともまずいだろう。視察、見学ならば……)団長は、内心で冷や汗をかきながら、言葉を選び直した。 魔術師団長のガードナーは、すっかりレイニーの魅力に引き込まれていていた。「魔法の常識を理解できると思いますがね。参加と言っても見学ですがどうでしょうか?」 団長は残念そうな表情で改めて誘ってきた。このままレイニー様を放っておくと、あまりにも魔法の常識を知らなすぎて危険だし、その並外れた能力の高さに目をつけられ、他者に利用されるかもしれないと考えたのだ。 レイニーは見学なら大歓迎だ、見学といいつつ魔法の練習になったら参加しちゃおうと思っていた。レイニーの顔には、悪戯っぽい笑みが浮かんだ。「うん。見学なら参加しようかなっ。楽しそうだね〜♪」 ガードナーは、レイニー様を訓練場に案内する決意を固めた。彼の態度は一変し、レイニー様に対する敬意と畏敬の念がはっきりと表れていた。その厳格な表情には、決意と忠誠が宿っていた。「レイニー様、どうぞ
「うん。冒険をしてみたいな〜って……」 (異世界と言えば、魔法と冒険でしょっ! 冒険は……まだ、してないけど。これからだよ。うん、これから!) レイニーの顔には、未来への期待が浮かぶ。「あぁ……そういうことですの。あまり危険なことをなさらないでくださいね」 フィオナは、呆れたような表情で、しかし初めて微笑んでくれた。その表情は初対面の時とは別人かと思うほどで、可愛らしく人を惹き付ける魅力を感じた。だが、その微笑みは一瞬で、元のムスッとした顔に戻ってしまった。「まずは、魔法を覚えないとかな……。魔法を覚えるのが楽しくてさ」 レイニーが、魔法の話で盛り上がってきたところに、メイドさんとルナが部屋に入ってきた。そして、入れ替わりにフィオナが呼ばれて出ていった。その足取りは、どこか名残惜しそうにも見えた。「お兄様、そろそろお昼ですね〜♪」 ルナが、レイニーの腕にしがみついてきた。その笑顔は、太陽のように明るかった。♢異世界での新たな発見 昼食を大好きなルナと一緒に食べた。やっぱり笑顔の美少女と一緒に楽しく会話しながら食事をすると、楽しくて癒されるね。レイニーは、ルナとの穏やかなひとときに心を満たされた。午後からは、勝手に城を彷徨いながら、城のマップを頭に描き覚えた。その行動は、もはや好奇心旺盛な子供そのものだった。 その後、書庫に向かい日課の読書をした。「他種族」という本があったので読んでみた。すると、人間種の他にも多くの種族が存在し、この王国でも昔は共存していたと記録にあった。また、王国の軍でも多くの獣人が活躍していたらしい。さらには、王国を救った英雄も存在したと書かれていた。 他の歴史書にも悪魔や天使の存在が多く記録に残っていた。まあ、悪魔は当然だが、悪さをして混乱を引き起こし、天使は疫病の治療や災害時に現れていたらしい。そして、王都近くの山にダンジョンがあり悪魔が出るとのことで、ダンジョンを封印し結界を張ったと記述されていた。 ドラゴンの存在なども書かれていて面白く、まるでゲームやアニメの話の中のようでワクワクしてくる。レイニーの心は、新たな知識によって高揚していた。 読書をやめ、気分転換に外に出ると、初めて軍の練習場に出てしまった。 そこで偉そうな者が椅子に座り、指示や文句を言っていた。その言葉には魅力を感じられず、ただ自分のストレスを