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4話 妹に注意される兄という新たな立場

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-10-22 12:25:42

 ルナの魔法がダメならば……他の人の魔法でもいい。とにかく魔法が見たい! レイニーの魔法への渇望は、ますます高まっていた。

「ルナの魔法じゃなくてもいいんだけど……魔法の練習場ってないのかな?」

 レイニーは、何とかして魔法を見る方法を探した。

「……あるじゃないですか。兵士の訓練場が……」

 ルナは、少し呆れたように呟いた。

 へぇ~。兵士の訓練場があるのか!? レイニーの目に、新たな希望の光が宿った。

「あぁ……そうだった。そこに行こうよっ。ね♪」

 レイニーは、とびきり可愛い笑顔を作り、ルナに懇願した。ルナは、頬を膨らませて、少しばかり不満げな表情をしながらも、立ち上がってくれた。

「むぅ……そこも禁止されていますよ……危ないので立ち入り禁止ですっ……」

 ルナは、小さく唸るように、重ねて注意を促した。

「立ち入らなければ良いんでしょ? にしっし……♪」

 レイニーは、悪戯っぽい笑顔を浮かべ、ルナの言葉をうまくすり抜けた。

「見るだけですよ……お兄様ぁ〜」

 ルナは、ため息をつきながら、レイニーに念押しをした。その声には、諦めと、兄への心配が混じっている。妹に注意される兄って……俺って、そんなキャラなのね。レイニーは、自分の新たな立場に、どこか複雑な感情を覚えた。

 妹と並んで仲良く歩いていると、すれ違うメイドさんたちが道を避けて、優しい笑顔で挨拶をしてくれる。偉くなった気分だね♪ レイニーは、その状況に浮かれ気分になり、自分もサービス精神旺盛に微笑み返し、可愛く手を振ってあげた。

「きゃぁ。レイニー様ぁ……♡」

「わ、私に手を振ってくださったのよ!」

「私によ。さっきも微笑み返して下さいましたし」

 メイドさんたちの興奮した囁き声が、周囲に響き渡る。ムスッとしたルナが、そんなレイニーをジト目で見つめてくる。え? 俺は喜んでくれるから、ただサービスして笑顔を返して手を振ってるだけだよ? レイニーは、ルナの反応に首を傾げた。

「お兄様ぁ。恥ずかしいのでやめて下さい……」

 ルナは、小さな声で、恥ずかしそうにレイニーの袖を引っ張った。

「え? 喜んでくれてるよ?」

「そんな事をしていると、お母さまに叱られますよ」

 ルナの言葉に、レイニーはビクリと体を震わせた。

「はぁい」

 レイニーは、素直に返事をした。

 どうやら俺たちは上層階にいたらしく、長い階段を数階下に降りて、ようやく兵士の訓練場に辿り着いた。中からは、剣がぶつかり合う音や、魔法が炸裂する音が響いてくる。……見えないじゃん!! レイニーは、目の前の扉に遮られ、焦れた。我慢ができずに扉を勢いよく開けて中に入ると、中にいた兵士たちの視線が一斉にレイニーに集中された。そして……責任者っぽい、いかめしい顔をした男が、険しい表情で近寄ってきて注意をされた。

「レイニー様、危ないので入室は禁止されています」

 男の声には、厳しさと、レイニーの安全を案じる気持ちが混じっていた。もぉ〜。目の前で魔法を放っている音が聞こえるのに……見えないっ!! レイニーは、魔法を見たい衝動に抗えなかった。

「ねぇ〜。ちょっと見るだけ! ねっ♪」

 レイニーは、渾身の可愛い笑顔を作り、男に懇願した。

「ダメです。私が怒られてしまいます。困らせないで下さい」

 男は、眉一つ動かさず、レイニーの可愛らしい笑顔にも屈することなく、きっぱりと断った。注意をされて……扉を開けられて追い出された。むぅ……俺、エライんだよね? それに、俺の笑顔が効かなかったぞっ。むぅ……。レイニーは、不満そうに口を尖らせた。

「だから、ダメですよって言ったのにぃ……」

 ルナが、呆れた顔をして、扉の外でレイニーを待っていてくれた。その表情には、「だから言ったじゃない」という諦めが滲んでいる。

「ねぇねぇ、魔法が見たい〜」

 レイニーは、駄々っ子のように妹に懇願した。ルナは、お願いをされて嬉しそうな表情をするが、解決策はなさそうで、ただ困ったように顔を曇らせるだけだった。

 そんな時に、背後から、凛とした声が掛けられた。

「こんな所で、なにをしているんですか? レイニー様、ルナ様」

 なんだかとっても……怖そうで、偉そうな人が声を掛けてきたぞ……怒られるパターンかなぁ……。レイニーの背筋に、冷たいものが走った。ルナ、ゴメンよぉ。レイニーは、心の中でルナに謝った。ルナは、その声に怯えたように俯き、瞳にはうるうると涙が浮かんでいた。

「あ、あの……魔法が見たくて……俺が、ルナを誘ったんで……」

 レイニーは、慌てて釈明しようとすると、ルナがレイニーの服を掴み、その背中に隠れた。うん。うん。それで良いよ。実際、俺が誘ったんだし……。レイニーは、ルナの行動に安堵した。

「……そうですか、魔法を見たくてですか……」

 偉そうな人は、レイニーの言葉に意味ありげにニヤッと笑った。その表情には、何か企みがあるかのような色が見て取れる。そして、「では、王族専用の訓練場に行きますか」と言ってきた。

 ルナが、え? っという顔でお偉いさんを見つめていた。その表情には、驚きと、信じられないという感情が混じっている。偉い人が先頭を歩き、二人を案内してくれるらしい。

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